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ぽんぽこぽんぽこポンぽこりん
ここはウィルノア郊外のとある場所
ビーノおじさんは、あるものを見つけました
これは…。なんともおおきな種だなぁ
しめしめ。こいつはおいしい柑橘系の種にちがいない
ビーノおじさんは、名もなき種を、柑橘太郎と名付け
つとめさきの果樹園に持ち帰ります
おーいみんなー。新しい仲間を紹介するぞぉ
はーい。果樹園のゆかいな仲間達が集まります
いっけん大物ざぼんくん
つんでれあねごのレモンさん
きのいい世話焼きミカンさん
マスコットきどりなゆずポン
柑橘太郎だ。みんな仲良くするんだぞお
ビーノおじさんはそういって、午後の仕事に戻りました
こうきしんおうせいな柑橘太郎は、みんなを質問攻め
みんなはさすがに疲れはて、てきとうな受け答えにしゅうしします
ねえ…ざぼんくーん
ざぼんくーん。ざぼんくーん
きみはどうしてそんなにおおきいんだい？
ぼくかい？しふくをこやしているからだよ
かっとなった柑橘太郎はミカンの汁をぶちゅりと飛ばして目をねらいました
い、痛いよ！皮をひねられたミカンさんはもんどりとうって倒れます
へいわな果樹園がいっしゅんにして、あびきょうかんの地獄絵図
やりすぎた。柑橘太郎は思いましたがごめんなさいが言えません
レモンさんは口をすっぱくして柑橘太郎に人の道を説きました
ミカンさんは皮をさすりながらも、まあまあとなだめます
ざぼんくんは、つくり笑いをうかべています
みんなおとなだなぁ
びみょうな空気がながれた夜があけました
柑橘太郎の姿がみあたりません
あぶりだしの書置きをのこして果樹園をとびだしたのでした
あぶるまえから、うっすら文字が透けています
せっかくなので、みんなはあぶってみることにしました
わたしがやるわ。柑橘太郎の居場所をあぶりだしてやるの
つんつんしながらレモンさんが率先します。ちょっとたのしそう
あぁ！レモンさん大変！自慢の艶出しオイルに引火しています
柑橘系オイルのいい香りが、ある点をさかいに、こうばしい臭いにかわりました
さすがにまずいと、みんなおおさわぎで鎮火します
レモンさんはそれでもあぶりだすのをやめませんでした
だって柑橘太郎に戻ってきて欲しいから。ひとすじの涙がほほをつたいます
あぶりだしの手紙には、柑橘太郎のしゃざいのことば
あたまをひやすため地中に潜ってくること
ほんとうはみんなと仲良くしたいことがせつせつと書かれていました
はやくしないと芽がでちゃうよ！
それもいいなとちょっとおもったのはないしょです
みんなで柑橘太郎をむかえにいくことにしました
おーい柑橘太郎くーん。太郎くーん
みんなの声がこだまします。柑橘太郎はうれしくてしかたありません
でも…。でていくタイミングがつかめません。やっぱり素直になれないや…
うるさいよあんたたち！きんりんじゅうにんから苦情がはいります
果樹園の仲間達は、きんりんじゅうにんのじらいをふんでしまったようです
やつらはあろうことか、アルカリイオン水をレモンさんに向かってあびせかけました
嗚呼！まいるどになってしまう！
これをみた柑橘太郎はかっとなって飛び出すと
ミカンさんの皮をひねり、きんりんじゅうにんの目をねらいました
し、しみる！きんりんじゅうにんは後頭部からいやな音をたてて倒れます
太郎！太郎！タ・ロ・ウ！みんなは拍手喝采で柑橘太郎をむかえました
みんなごめんなさい…
ちょっぴりおとなになった柑橘太郎はふかぶかとしゃざいし
こがねいろのお菓子をそっと差し出しました
えへへ…。ざぼんくんも、レモンさんも、ミカンさんも、ゆずポンも
みんなみんな笑顔です
時は流れ、ビーノおじさんは、おじいさんになりました
やさしい目をしたおじいさんは、そっと大木の幹をなでています
ごめんね、ごめんね。おじいさん。ぼく柑橘系じゃなかったよ
みんなを笑顔にできる爽やかな果実をみのらすことなんてできないんだ
ただの役立たずな大木になっちゃったよ
ごめんね、ごめんね。おじいさん
これ！なにをいっておるんじゃ。お前はみんなの役にたっとるぞ
おおきなお前の根っこが、みんなのための水を蓄えておる
おおきなお前の木陰は、みんなに安らぎを与えておるんじゃ
名もなき種は…。名もなき種だった柑橘太郎は…
果樹園に根を下ろし、おおきなおおきな木へと成長したのでした
ビーノおじいさんは笑っています
はっさくさんも笑っています
ねーぶるくんも笑っています
でこぽんちゃんも笑っています
みんなみんな笑顔です。みんなみんな柑橘太郎の木が大好きです
思い描いた未来とはちょっと違ったけれど
今もちょっぴり幸せで
柑橘太郎のものがたり。これはあなたのものがたり
大人のための童話 ～柑橘太郎～