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過去、コンチェルトゲートの主に身内向け業務連絡用として存在していました(2010年秋。事実上の更新終了です)
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メタルラッシュ時代―

今でこそ地盤の弱体化、フレイア大陸南部の新鉱脈開発により、色褪せてしまったが
当時、店裏の穴(八百屋地下)は採掘士達の熱気で溢れ返っていた
現地では食料や杖、採掘師向けの商売も盛況で
まさに、もうひとつの都市だった

積極的な武器防具職人は、自ら採掘場へ足を運び、金属を買い求めたものだ
初めて採掘場を訪れた私の感想はこうだ
薄暗く荒涼とした岩石の地下世界は、月面への上陸を思わせ
採掘師達はフロンティアを求める開拓者


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採掘士の仕事は過酷だ
大怪我を負って病院に運ばれる者が後を絶たず
中には、魂の乖離を起こす者さえいる
大地を荒らすものとして、偏見の目で見られることもある
それでも採掘士を志すものが後を絶たないのは
際立って稼ぎが良いからであろう

曲者揃いの採掘士
中でも、メタルラッシュ時代から付き合いのある
カソナードとブラウニーの姉弟は一風変わっている
お姉さんは踊り子、弟君はマンドリンの演奏者
食べていくため、自分たちの店を持つ夢のため、採掘師を兼業している

彼らは”Sugar Moon”なるバーに勤めており
私も何度か誘われたことがある
お酒がとんと呑めない私には別世界であり、ある種の偏見もあった
それとなくお断りしていたのだが
熱心に、それも言葉巧みに誘われるため、ついに折れた


決戦の夜。ココット(悔しいかな彼女は呑める人)を引き連れて戦場に赴く私
意を決して重い扉を開ける
私の想像とは違い、いかがわしさのない簡素なつくりの健全なお店だった
お酒の他にちょっとした料理、何故かヒスパニック系が充実
こだわった珈琲も飲めるハイブリッドな品揃えで
呑めない私に、弟君は美味しい珈琲をご馳走してくれた

オーナーは理解ある人で姉弟を応援してくれているそうだ
もしもお店を持ったなら調理師にどうかとココットが売り込みをかけ
ならば、私は調理用にルーンアクスでもいかが、と冗談交じりに持ちかける
シラフな私は弟君を捕まえ、世界情勢について熱く語り
酔ったココットは楽しそうに、珍妙な踊りをお姉さんに披露している
そうこうしている内に、姉弟の舞踏が始まった

空気が変わる
どこか物悲しくも情熱的なマンドリンの音色
躍動感溢れる舞は、湿度を伴った独特の浮遊感が印象的
憂いを帯びた表情でしなやかに踊るお姉さんは、月世界の舞姫そのものだった
月世界の舞姫と、その従者が紡ぎだす物語
手を伸ばしても届かない、遠い遠い国の出来事のようで
憧れと寂しさとないまぜになった、締め付けられるような複雑な感情が込み上げてきた
ひと時の静寂。そして、万雷の拍手



帰り道、興奮冷めやらぬ私達は
水路の傍らでほてりを醒ますことにした
夜空に輝く美しい月
そこに住む者にとっては荒涼とした厳しい世界なのだろう
屈託なく笑うあの姉弟の
未来を見据える強い瞳が脳裏をかすめる

隣では、上機嫌なココットが珍妙な踊りに磨きをかけている
私は、腹の底からプクプクとこみ上げる笑いを堪え
小石を投じて、水面の月を踊らせた


ジャグリン ―月世界の舞姫―





 

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